目次
1. 和の香りが楽しめる「お香」の魅力
落ち着く和の香りが楽しめる「お香」。空間に広がる香りを楽しんでいる間に、心もほぐれてリラックスできるのが特徴です。さらに、煙には空間を浄化してくれる効果や、梅雨時期には、湿気を吸い取る効果もあると言われています。
香りで癒してくれるアイテムには「アロマオイル」もありますが、その違いは材料と作り方にあります。
アロマは花や葉などの植物から抽出した精油を使います。一方、お香は、木自体が香りを持つ香木を材料に作られています。例えば、お香の代表格の「お線香」は粉末状にした香木などの材料を調合して練り、固められて作られています。
お香は火を使うものから、常温で楽しむものなど、実はたくさんの種類があります。そこで、お香にはどんな種類があるのか、形や使い方についてまとめました。
2. 知っておきたい、お香の種類と使いかた
お香というと棒状のものや蚊取り線香のような形のものを思い浮かべる人は多いと思いますが、実は香りや色、形、使い方など様々な種類があります。お香はどんな風に使いたいかに合わせて選び楽しむことができるも魅力です。
お香の種類はたくさんありますが、タイプは大きく分けて3つに分けることができます。
お香のタイプ
● 直接火をつけるタイプのお香
● 常温で香るタイプのお香
● 間接的に熱を加えるタイプのお香
A. 直接火をつけるタイプのお香
「直接火をつけるタイプのお香」 は、最も広く知られているお香ではないでしょうか。火をつけるだけでお香の香りに癒されるような空間を作ることができます。種類も多く販売されているのでお香を手軽に始めたい人にもおすすめ。
B. 常温で香るタイプのお香
「常温で香るタイプのお香」 は、火を使わずに室温で香るように調合されています。和柄の袋などにポプリのように可愛いものもあるので、インテリアのアクセントにしたり香りを持ち歩くのにも便利です。持っているだけで、ふんわりとお気に入りの香りを楽しむことができます。
C. 間接的に熱を加えるタイプのお香
「間接的に熱を加えるタイプのお香」 は、時間と手間をかけて香りを楽しむことができるお香。熱した灰に香木をのせて、香らせるなど、一手間かけてゆったりとした時間とともにお香の香りを味わいたいという人におすすめです。
A. 直接火をつけるタイプのお香の形と使い方
ここからは上で紹介した3タイプに分けて、お香の種類とその使い方を紹介します。どういったシーンや場所でおすすめなのか等もまとめているので、お香を選ぶ際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
まずは最も馴染みのある「直接火をつけるタイプのお香」について見ていきたいと思います。
スティックタイプのお香(お線香)
お香といえば、スティックタイプのものをイメージする人も多いのではないでしょうか。お線香とスティックタイプのお香はどちらも香料を固めて作られており同じもの。お線香の香りが好きな人はお香として使用するのも良いです。
スティックタイプのお香は、燃えている面積が均一なので香りも均一に広がるのが特徴です。部屋の中で使うのが一般的で、梅雨時期の湿気取りや匂い取り、瞑想やヨガの時間に使うのもおすすめです。
スティックタイプ(お線香)の使い方
【準備するもの】
●お香
●お香たて(差し込み口がついた専用のお皿が便利。雑貨屋さんなどでも売っています)
●ライター、ろうそくなど
【火のつけ方・消し方】
お香の先端に火をつけ、燃え始めたのを確認したら炎を吹き消し、お香たてに立て、香りを楽しみます。火の消し方は、金属のクリップなどではさんでおくと自然と火が消えます。
スティックタイプのお香の長さが燃焼時間に比例しているのも知っておくと便利。
目安は 約7cmで10〜15分ほど燃えます。最初にポキっと折っておくと、目安の時間でちょうどよく火が消えるように設定することができます。
インド式と日本式のお香
アジア系の雑貨屋さんでよく見かけるお香は、竹などの芯に香料が塗られている「インド式」のお香が一般的。
対して「日本式」のお香は、香料のみで作られていて長さも短いタイプになっています。
円錐型・コーンタイプのお香
円錐型のお香はコーンタイプとも呼ばれています。短時間で香りが広がりやすく、円錐型のまま灰になるので、灰が散らばりにくくお掃除もラクなのが特徴です。スティックタイプのように専用のお皿もいらないので、おうちの小皿などでも代用でき、使いやすいタイプです。
円錐型のまま燃えていくので、下に行くほど香りが強く広がっていくのが特徴。短時間で一気に香りを焚きたい時にはこのタイプがおすすめです。
円錐型・コーンタイプの使い方
【準備するもの】
●お香
●お香たて(底面まで燃えるので、木製のお皿は焦げたり燃えたりするので危険です!不燃性のお皿を使います)
●ライター、ろうそくなど(火がつきにくいのでろうそくが便利です)
【火のつけ方・消し方】
底面を持ち、円錐の頂点の部分に火をつけます。先端がオレンジ色になるまで燃焼させたら、ゆっくりとお皿へ移動させて、香りを楽しみます。火がつきづらいので、ろうそくを使うと良いでしょう。
渦巻型のお香
渦巻型は蚊取り線香のように、ぐるぐると渦を巻いている形のお香です。燃焼時間が長いので、広いお部屋や、風や空気の通る玄関、庭に面したお部屋、リビングなどで使うのにも最適。日常で楽しめるお香です。
渦巻型の使い方
【準備するもの】
●お香
●お香たて
●ライター、ろうそくなど
【火のつけ方・消し方】
渦巻の先端に火をつけます。燃え始めたのを確認したら炎を吹き消し、お香たてに立てて香りを楽しみます。火の消し方は、燃焼時間が長いのであらかじめ短く折っておくか、金属のクリップなどではさんでおくと自然と火が消えます。
渦巻型のお香は燃焼時間が長いので、火を焚きたい時間に合わせてあらかじめ長さを短くしておくと、スムーズに火を消すことができます。慣れてきたら様子をみながら調整してみてください。
B. 常温で香るタイプのお香の形と使い方
「常温で香るタイプ」のお香は、火を使わずにそのまま香りを楽しめるのが一番の特徴です。
匂い袋
匂い袋には、常温でも香るように調合されたお香が入っています。白檀や甘松、丁子など の香料が刻んで調合されているものが多いです。火を扱わずにお香の香りを楽しむことができるので最も手軽で簡単に始められるお香ではないでしょうか。
匂い袋は香らせたいシーンや場所によって使いかたを変えられるのもメリット。
ふわっと香りを漂わせて和の香水のように使いたい時には、和服の場合は帯揚げに通したり袖の袂に落として使うのがおすすめ。洋服ならポケットや手持ちのポーチに忍ばせて持ち歩くと良いでしょう。
タンスやクローゼットに入れておくと衣類の虫除け効果になるような香料を含むものもあります。袋のデザインで選んでインテリアのアクセントにするのもGOOD。
匂い袋を財布に入れて金運アップ?
匂い袋を財布に入れている人を見かけたことはありませんか。
古来よりお香は魔除けとしても使われていた背景があるため、財布に入れておくとお金にまつわる災いから持ち主を守って金運を上げてくれるとか。
C. 間接的に熱を加えるお香① - 香木とその使いかた
「間接的に熱を加えるタイプ」のお香は、現代では馴染みが少ないものですが、源氏物語にも登場しているほど昔から愛されています。
手間や時間をかけてお香を楽しむ方法になるので、昔から続く日本文化を味わう気持ちで、ゆったりとリラックスする時間を過ごすことができます。
香木(こうぼく)とは
「香木」 は香料ではなく、木の香りをそのまま楽しむものになります。
直接火をつけるのではなく炭で熱した灰を使って香りを焚いていくのが香木の使いかた。香木の楽しみかたは、空薫(そらだき)と聞香(もんこう)の2つの方法があります。
香りだけでなく手間や時間も併せて楽しむもので、心を落ち着けることができるはず。
香木の使い方:空薫(そらだき)
空薫(そらだき)は、部屋中に香りを漂わせる楽しみ方になります。香木だけでなく代わりに練香や印香などを使うこともあります。
香木の使い方:空薫(そらだき)
【準備するもの】
香炉・灰・炭・火箸・お香(香木・お線香・練香・印香)
【方法】
炭に火をつけ、炭をおこしたら灰の中へ埋めて、灰を温めます。熱くなった灰の上にお香をのせ、香りを楽しみます。お香から煙があがったりお香がこげてしまう時は温度が高すぎるので炭の位置を調整しましょう。
「老山白檀」はインド・マイソール地方に産する最高級の白檀です。
上品で爽やかな香りが特徴です。
お焼香や日常の空薫(そらだき)匂い袋等におすすめです。
香木の使い方:聞香(もんこう)
聞香(もんこう)は、香木の香りを聞くという趣あふれる、香りの鑑賞方法です。聞香では小さくした香木を使います。
香木の使い方:聞香(もんこう)
【準備するもの】
聞香炉・灰・香炭団・火道具(火箸、灰押え、銀葉挟み)・銀葉・香木
【方法】
「香炭団」を電熱器やコンロなどを使って、火が回るようにおこします。香炉の中心に穴を作り、炭団を灰の中へうずめます。
灰をかき上げるようにして山型を作ったら、山のてっぺんから炭団まで火箸を通して「火窓」を開けます。
山の上に水平に銀葉をのせ、香木をのせたら準備完了です。
最後に香炉をフタするように、親指と他の4本の指で輪っかを作り、穴の中から繊細な香木の香りを聞き、楽しみます。
銀葉鋏(ぎんようはさみ)、羽箒(はぼうき)、火筋(こじ)、香匙(こうさじ)、灰匙(はいさじ)、灰押(丸型)(はいおさえ/はいおし)、灰押(扇型)(はいおさえ/はいおし)の7点セット
香木を手軽に楽しめる電気香炉も

空薫(そらだき)や聞香(もんこう)は手間や時間をかけて香りを楽しむ方法ですが、香木を手軽に楽しみたいという人には「電気香炉」という選択肢も。
C. 間接的に熱を加えるお香② - 練香とその使いかた
練香(ねりこう)とは
練香(ねりこう) とは、粉末にした香料に梅肉や蜂蜜などを加えて練り上げたもので、壺の中で熟成させた1cmほどのサイズの丸薬状のお香です。
こちらも歴史は古く、源氏物語にも登場しており、平安貴族の間で楽しまれたものだと言われています。現代では主に茶道で使われています。
練香の使い方
「間接的に熱を加えるお香① - 香木とその使いかた」でご紹介した「空薫」を用いて、部屋中に香りを漂わせて楽しみます。
【準備するもの】
香炉・灰・炭・火箸・お香(香木・お線香・練香・印香)
【方法】
炭に火をつけ、炭をおこしたら灰の中へ埋めて、灰を温めます。熱くなった灰の上にお香をのせ、香りを楽しみます。
C. 間接的に熱を加えるお香③ - 印香とその使いかた
印香(いんこう)とは
印香(いんこう)とは、粉末状にしたお香を、梅、菊、椿、葉などの型に押しかためられたお香です。
濃い色からパステルカラーのものまであり、落雁のように可愛い見た目が特徴。
香りは空薫をして楽しみます。乾燥させて固めているものなので、保存するときは湿気に注意する必要があります。
印香の使い方
「間接的に熱を加えるお香① - 香木とその使いかた」でご紹介した「空薫」を用いて、部屋中に香りを漂わせて楽しみます。
【準備するもの】
香炉・灰・炭・火箸・お香(香木・お線香・練香・印香)
【方法】
炭に火をつけ、炭をおこしたら灰の中へ埋めて、灰を温めます。熱くなった灰の上にお香をのせ、香りを楽しみます。
3. お香を使う際に気をつけること
様々なお香の楽しみかたを紹介してきましたが、お香を扱う際には気をつけて欲しい点もいくつかあります。
特に火を扱う場合には火事や火傷などに十分注意する必要があります。
安定した場所に置く
お香は火を使うので、周りに燃えやすいものを置かず、お香は安定した場所に置きましょう。
エアコンの風や扇風機など、風でお香が倒れやすい場所も避けましょう。
部屋の中を換気をする
お香を焚く時は、換気して新鮮な空気を取り入れながら気持ちよく香りを楽しみましょう。
煙をもくもくさせていると、香りが充満してきて気分が悪くなることもあります。
適量で楽しむ
お香を楽しむには適量を守るのが大切です。
例えば、10畳ほどのお部屋なら、スティックタイプのお香は1本で十分です。何本も焚いたり、1日に長時間ずっと焚いていると鼻が麻痺してきてしまうこともあります。
「香害」という言葉もあるように、周囲のおうちにも迷惑がかからないようにご注意ください。
4. おわりに
今回はスタンダードなものから伝統的なものまで様々なお香の種類とその使いかたを紹介しました。平安時代から続くお香文化は、香りの種類や粋な楽しみかたを知っていくにつれてさらに楽しくなっていくはず。
匂い袋やスティックタイプのお香など気軽に始められるものも多いので、ぜひ参考になれば嬉しいです。